エッセイ

ゆずりはの詩

仕事を始めるにあったって、「ゆずりは」という名前をつけたとき、父に「河合酔茗の詩を知っているのか」と言われ、正直なところ知りませんでした。教えてもらって読んでみて、あらためて「ゆずりは」という名前にしてよかったと思いました。

最近、幼稚園のお母さんの一人にも「ゆずりはの詩っていいですよね」と言われました。その方はこの詩が亡くなられたお父様との大切な思い出なのだそうです。

私も時々読んで、こどもたちに渡す未来のことを想像し、気持を正していきたいと思います。

ゆずりは    河合酔茗

こどもたちよ、
これはゆずりはの木です。
このゆずりはは
新しい葉ができると
入れ代わって古い葉が落ちてしまうのです。

こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉ができると無造作に落ちる、
新しい葉にいのちを譲って—。

こどもたちよ、
おまえたちは何をほしがらないでも
すべてのものがおまえたちに譲られるのです。
太陽のまわるかぎり
譲られるものは絶えません。

輝ける大都会も
そっくりおまえたちが譲り受けるものです、
読みきれないほどの書物も。
みんなおまえたちの手に受け取るのです、
幸福なるこどもたちよ、
おまえたちの手はまだ小さいけれど—。

世のおとうさんおかあさんたちは
何一つ持っていかない。
みんなおまえたちに譲っていくために、
いのちあるものよいもの美しいものを
一生懸命に造っています。

今おまえたちは気がつかないけれど
ひとりでにいのちは伸びる。
鳥のように歌い花のように笑っている間に
気がついてきます。

そしたらこどもたちよ、
もう一度ゆずりはの木の下に立って
ゆずりはを見る時がくるでしょう。