第5回 コド・モノ・コト 横須賀雪枝

子どものための道具であっても、簡素に美しく、そして使いやすく、大人もほしくなろうようなものであってほしいと常々思っている。しかしそういうものにはなかなか出会えない。

写真は大人が子どもに食べさせる時に使うための匙。朴の木を刳って木地に漆を塗って仕上げている。漆器の産地、輪島で製作されたもので、デザインしたのは「コド・モノ・コト」というプロジェクトの事務局で、子どものためのワークショップを主宰する増田多未さん。食べやすいように指のかかる部分に厚みを持たせ、また子どもが自分食べる場合も持ちやすいように柄の部分が弧を描いている。成長してからも長く愛用してもらえるものを目指したと増田さんは言う。

この匙に私が出会ったのは「コド・モノ・コト」のプロジェクトに参加したのがきっかけだった。このプロジェクトはその名前の通り、子どもの「モノ」と「コト」について考え、活動するというもので、「子どもの身のまわりの日用品こそ愛着のわく良いデザインのモノを使ってほしい」という想いを持ったデザイナーや作り手が集まって、2005年5月にスタートした。世の中の子ども向け商品は刺激が強過ぎたり、生活感を無視したような色使いやかたちだったりするものが少なくない。できることなら、子どもにとっても大人にとっても、良いと感じるモノをもっと増やしたいと、日用品のデザインを提案したり、子どもを対象にしたワークショップを開催したりしている。

子どもが子どもでいる期間というのは意外と短くて、あっという間に育ってしまい、おもちゃや様々な子ども向けの日用品からすぐに卒業していってしまう。だからこそ、子どもまわりのモノは子どもが使わなくなった後もすぐに捨てられてしまうようなものではなく、家族の誰かにずっと使いたいと思ってもらえるようなものがいい。思い出の品としてだけでなく、「使いたいモノ」として残るものでありたい。この漆の匙もジャムスプーンにしたりして、それぞれの家庭できっと使い続けられていくだろう。

子育て中の親はいつも時間に追われがちである。でもそんな時にしかできない育児を通しての小さな発見や、思索を大切にして仕事や暮らしに反映できたらいいと思っている。

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